細菌の生合成遺伝子の同定と代謝産物の測定

前項「★微生物ゲノム解析事例のご紹介★」に続き、本稿ではもう少し詳細な解析事例として
新たな菌株で生合成遺伝子の情報を得る、というゲノム解析事例をご紹介します。

細菌が合成する二次代謝産物には、抗生物質をはじめとする有用物質が含まれることが知られています。
また、細菌のゲノムにはそのような二次代謝産物を生み出す生合成遺伝子がクラスターをつくっていることが分かってきました。

  • 新しく単離した菌株で生合成遺伝子の情報を得たい
  • 菌に有用物質を効率的に産生させる培養条件を検討したい
  • 将来的に生合成遺伝子を改変し、代謝活性を向上させたい

1. 解析の流れ

<ご用意いただくもの>

菌体からゲノムDNAを抽出していただき、DNAを冷凍状態でご提供ください。
Illuminaのショートリード解析には一般的なゲノムDNA抽出キット、PacBioのロングリード解析には高分子DNAを得られるゲノム抽出キットをご利用ください。

 

<解析作業>

解析作業は、ライブラリ調製、シーケンス、データ解析の大きく3工程に分かれます。

  • ・ライブラリ調製:DNAを断片化、アダプターを付加し、シーケンスライブラリを作製します。
  • ・シーケンス:次世代シーケンスにより、全ゲノムシーケンスを行います。
  • ・データ解析:シーケンスデータからゲノム配列を構築し、遺伝子情報を付与します。

 

2. 解析結果

<納品データ>

○ゲノム配列情報

ゲノムの塩基配列が記載されたデータです。
遺伝子を検索したり、他の菌株との比較を行うことができます。

○遺伝子情報
ゲノム上の遺伝子情報です。
遺伝子名、遺伝子の配列がわかります。

ここまでの解析詳細については、こちらを併せてご参考ください。

<生合成遺伝子の検索>

納品データの「遺伝子情報」の一覧表から、生合成遺伝子を検索することができます。
また、antiSMASH(※)などの生合成遺伝子解析用プログラムに、納品データの「ゲノム配列情報」を入力することで、生合成遺伝子のクラスター情報が得られます。

※ antiSMASH
Blin, Kai, et al. “antiSMASH 5.0: updates to the secondary metabolite genome mining pipeline.” Nucleic acids research 47.W1 (2019): W81-W87.

 

3. 解析のポイント

次世代シーケンサーにはショートリードタイプ(Illumina)とロングリードタイプ(PacBio)があります。サンプルの状態やご研究の目的に合わせてお選びください。

<ショートリード解析>

  • 低コストでドラフトゲノムを作成したい場合
  • 高分子のゲノムDNAを大量に調製することが難しいサンプル

上記の場合には、Illuminaシーケンサーを使用したショートリードの解析がおすすめです。
1本のリードが150bpと短いため、アセンブルの困難なリピート領域などではコンティグが分かれて出力されますが(バクテリアでは30~300本程度)、遺伝子予測を行うのには十分なドラフトゲノム配列が得られます。

<ロングリード解析>

  • できるだけ長いコンティグ配列を作成したい場合
  • 高分子のゲノムDNAを大量に調製することが可能なサンプル

上記の場合には、PacBioシーケンサーを使用したロングリードの解析がおすすめです。
PacBioでは、1本のリードが15kb程度と長く、リピート領域も包含してシーケンスされるため、長いコンティグを作成することができます。バクテリアでは1染色体=1コンティグのコンプリートゲノムまでまとまるケースも多くございます。

<ロングリード+ショートリード解析>

ゲノム配列決定において配列の精度を重視される場合は、ロングリード解析で得られたコンプリートゲノムをショートリードデータで塩基補正することをおすすめします。
PacBioデータのアセンブルにより作成したゲノム配列には、連続塩基の読み間違い(例:○ AAAA ⇒ × AAAなど)が生じ易い傾向があります。
IlluminaではそのようなInDelが生じにくいため、同じサンプルでIlluminaのデータも取得しますと、塩基補正を行うことができます。

 

4. あわせておすすめ

トランスクリプトーム解析

同定した遺伝子群を含む網羅的な遺伝子発現解析で、実際の各遺伝子の働きを見ることができます。
培養条件の変更や薬剤添加など、外部要因による目的遺伝子の発現変動を追うことで、より適切な産生条件を探索するヒントとなるかもしれません。
細菌のトランスクリプトーム解析のポイントは2点あります。

  • ① 細菌のmRNAは、真核生物のようにPoly(A)を持たないため、Oligo-dTビーズ等を用いたmRNA精製はできません。代わりに、Total RNAの大部分を占めるrRNAを除去し残ったRNAをシーケンスするという方法を採ります。弊社では、高効率にrRNAを除去するライブラリ調製試薬を用いて細菌のRNAシーケンスを行うサービスをご提供します。
    原核生物 RNA-Seq ライブラリ調製リニューアル
  • ② 細菌は多くの真核生物と異なり、単一のプロモーターの制御下にある複数の遺伝子のセット(オペロン)単位 で転写が行われ、複数遺伝子由来のmRNAが連結状態で生成されます。したがって、ゲノム上の遺伝子領域の同定が 転写制御を把握するための肝になります。

メタボローム解析

実際に生合成されている代謝産物を網羅的に検出するには、メタボローム解析が有用です。サンプルに含まれる有機酸やアミノ酸などの低分子化合物や代謝産物を検出します。
受託メタボローム解析

サービス一覧へ戻る
Page Top